「異方性」を理解して、より良いCFRP・カーボン設計を
異方性とは?
異方性とは物理的特性が方向によって異なることを指します。特に機械設計の分野では、XYZ方向にそれぞれ固有のヤング率やポアソン比を持つ材料のことを異方性材料と呼びます。
異方性を持つ材料で一番身近なものは木材です。木材は割れやすい方向、割れにくい方向があります。これは向きによって強度が違うことを意味しています。 工具を使わず木を切断した場合、断面がささくれた状態になることを経験したことはないでしょうか。これは木が成長する方向と、その垂直方向で力学的特性が違うために発生する現象です。縦に裂けやすい状況、すなわち、せん断破壊が縦方向だけに起きやすいという状況に他なりません。
工具を使わず木を切断した場合、断面がささくれた状態になることを経験したことはないでしょうか。これは木が成長する方向と、その垂直方向で力学的特性が違うために発生する現象です。縦に裂けやすい状況、すなわち、せん断破壊が縦方向だけに起きやすいという状況に他なりません。
ちなみに、向きにかかわらず強度などの特性が変わらないものを“等方性”といい、一般的な金属や樹脂などはこちらに該当します。
カーボン・CFRPは異方性を有する
カーボン・CFRPは原則として異方性を持つ材料です。CFRP製品はプリプレグと呼ばれる薄いシート上の原料とし、重ね合わせて(積層)成形します。
参考:オートクレーブ成形を理解する
プリプレグとはマトリクスと呼ばれる樹脂に、炭素繊維を浸透させたものであり、繊維の向きによって物理的特性が変化します。繊維が伸びている方向への強度は高く、繊維を横切る方向へ加わる力には弱くなります。またこの特性は、力学的な観点だけでなく、熱膨張や熱伝導にも適用されます。
参考:熱膨張ゼロ以下!? 金属にはないCFRP・カーボンの可能性
CFRP製品はこの異方性を持つプリプレグを重ね合わせる(積層させる)のですから、基本的には異方性を持つ部材になります。
思わぬ設計ミスを防ぐために
異方性を上手に使うと、少ない材料、少ない工数で目的の要件を達成することが可能です。部材への荷重が一方向である場合は、その方向に特化するようプリプレグを重ね合わせてしまえばよく、少ないプリプレグで成形可能、すなわち軽量化や製作コストの削減に繋がります。
しかし、荷重が一方向のみという要件だったとしても、実際には“せん断力”や“ねじれ”が他方向からに加わっていたという事例も数多く存在します。一般的な金属や樹脂の場合は等方性であるため、最も荷重がかかる方向の要件をクリアしてしまえば、おのずと他方向から加わる微小な力の問題も解決できてしまいます。そのため、問題視されないのですが、異方性がある場合は、向きによって著しく強度が異なるため、注意が必要になります。
例えば、一方向強化のCFRPでは、縦と横で弾性率や強度で100倍もの差が存在する場合があり、要件以外の微小な力でも破壊や許容できない変形が生じます。
繊維方向 | 直交方向 | |
---|---|---|
弾性率, GPa | 500 | 5 |
強度, MPa | 2000 | 35 |
熱膨張率, ppm/℃ | -1 | 30 |
熱伝導率, W/m/K | 350 | 1 |
異方性を考慮した設計は必須 -積層設計を行う
このような異方性を持つCFRPにおいて、一方向だけの単純な解析や検討では思わぬミスや事故を起こすことがあるため、異方性については正しく理解しておく必要があります。
カーボン・CFRPの設計には、「積層設計」というフェーズが存在し、そこでは異方性を意識しながらプリプレグの積層を最適化します。異方性を重ね合わせたときの計算だけでなく、定められていない潜在的な要件をくみ取る技術が必要です。
工夫次第では、CFRPが等方性を持った材料の様に振る舞うことも可能です。(擬似等方性と呼ばれています)
テックラボはカーボン・CFRPの試作開発、設計のプロフェッショナル集団です。異方性への理解はもちろん、専門的な積層設計や、シミュレーションを実施し、最適なCFRP成形を行います。超軽量を必要とする設計や、コストを削減したい方など、異方性をうまく使うことで解決する場合がございます。
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